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#最終回 「今日から花粉症は病気ではなく個性になりました。」<障害個性論を考えるためのフィクション>

やっと最終回です!
皆様のご愛読に心から感謝いたします。

過去話はこちら
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「あ、チルタカchのみなさんこんにちは。

俺は単なるしがないライターね。

このおじさんは××党のA議員さん。

毎回のようにオフ会来てくれてるし、なんといってもチル君の大スポンサーだからね!


ぜひ今回お礼がしたくてお呼びしたんですよ」


「ス、スポンサー?な、何を言っているのか良く分からないんだが…」
A議員はしどろもどろになり始めた。さっきまでの名演技はどうした?


しかし後ろから参加者の一人が割って入る。

「あ、チルさんのライブ配信切られました!!

私のとこのch使って!これスマホ」


MMMMが仕事を始めたらしいが、こちらもそのくらいは読んでいる。

事前の打ち合わせ通り、ここに招待された配信者たちも
何かあったときのために同時にこの様子をライブ配信していたのだ。




俺はスマホを借り先ほどの言葉を続けた。


「え~すいませんライブ配信MMMMさんに切られちゃったみたいなんで。

チルタカchなんですけど急遽こちらを使わせていただきます。

え~先ほどの続きですね。

A議員からMMMM、そっからチルタカにこういうこと喋ってねって
お仕事が行くと。そういう話でした。



そーしーてー、

当然、Aさんにもお願いしてきた人たちがいるわけだ。
限られた社会保障費を自分のところに回してほしい人たちは沢山いる。

そのために、○○減らす手はず整えたんで少しこっちにも…ってやれば交渉はしやすいよね。

もちろん、普通はその減らす手はずってのが容易じゃない。
しかし、世論が都合よく動いてくれてたなら…?

言うまでもなく、都合よく世論を動かすために
都合よく動いちゃったのが今日ここに集まってくれてる奴らだ。


でも流石に強制労働させられてたわけじゃない。
いろいろ事情はあるにせよ、俺らは自分で世論を動かす手伝いをしてしまったんだ。

だから、自分らで蒔いた種は自分らでなんとかしよう。
そう思って少し前から準備と情報収集をしてたの。




ま、話を戻そう。

Aさんに世の中を変えてほしいって頼んだ人たちはお礼として
たくさんの政治資金パーティー券を買いました。


何で知ってるのかって?
Aさん、△料亭さん好きだよね。

そして、△料亭さんはここ○○酒房さんの店主さんが経営してる。
自分の店に盗聴器仕掛けるなんて別にワケないからね。
もちろん、店主さんも今日の俺らの味方だ」



そうして俺はMPプレーヤーのスイッチを入れる。
ごあはははという独特な笑い声は、説明するまでもなしに声の主を如実に表していた。

色々もらって実にウキウキしている彼の様子が目の前に見えるかのように
雄弁に議員になってよかった、こんなものもらえるんだとはしゃいでいて
流石にもう少し…人に聞かれると…ね?と相手からたしなめられている。




「や、やみゃ、やめるんだああ!
そんなこと俺は言ってないじょ!!俺の声じゃねえぇぇ!!
そうだ、これはワナだ、作りもんだろう証拠をだせぇしょーこーを!!」


泣きそうな焦点の定まらない目で泡を飛ばして叫んでくる。
今にも殴りかかりそうな彼を仲間の数人が制止した。


「落ち着いてよ。作り物ならなんでそんなに慌ててるんです?


ま~色々他にもあってさ。

お願いした人たちは自分とこの団体員に「投票のお願い」をしていたと。

そしてわざわざ「次の選挙はAさんに投票しなさい、さもなくば解雇です」と署名させてたんだね~
こっちは明確にアウツですよ」



俺はわざとらしく紙で顔をあおぐ。
無論たくさんの署名入りの紙で。ああいい風だ。



「待て待て待て待て!ちゅがう!何を言っているんだあ!

あくまで私の知人の団体が色々手はずをととのえてくれてるんだ!私は関係ない!

私自身は署名なんかさせてなんかにゃいんだ!

私の意見を酌んだように上手いことやってくれるだけなんだ!これは偶然だ!

というか録画止めろぉぉ!!相手の同意を得ない録画は違法だうあふぁああ!」



A議員は自分が何を言っているのかも多分分かっていないのだろう、
半泣きになり呂律も回っていない。
子供のように腕をぶんぶん振り回し威嚇している。


彼はもうタガが外れてしまったのだろう。
これ以降もありとあらゆることを自らお話ししてくださった。


自分と関連団体、会社を通じたMMMMとの関係性。

自分が何を依頼したか。されたか。いや意図を酌んでくれたか。

自分の親族が多数団体にいて、その団体がどのように票集めしてくれたか。

自分の関連団体と官僚との素晴らしいコネクションがそもそもの始まりだったとか。

自分へ大物政治家が世の中を変えるためのお手伝いをお願いしにきたこととか。




自分が4回落選した時に奥さんにどんな扱いを受けていたかとか。
自分の娘に酒臭いからとろくに口も聞いてもらえないとか。
自分の主治医にこれ以上酒たばこは禁止ですと言われているとか。



まあ要するに、
彼は手持ちの団体を使い上手いこと資金繰りができないか考えた。

そこにある官僚が現れ、ちょっと世の中を動かすお手伝いしてくれればお小遣い上げるよと言ってきた。

そしてその官僚の経営してるMMMMの下請けがハーイ僕ネット使ってうまいことやりまーすと名乗り出た。


彼も単に大物政治家や官僚達の使いっ走りの一人で、

ネットやマスコミを使って上の手を汚さない程度に

どの程度使えるかというテストにされていたのだ。



しかし彼は雑でこういうことに向かず、こんなしがないライターに足元をすくわれる程度でしかなかったと。

もちろんマスコミが本気でやれば一瞬で分かることだったろうが
やらなかったということは…
全く、世の中「つながり」だらけですな。




なんだか急に攻撃する気も失せた。


彼はまだ壊れたラジカセのように一人でしゃべり続けている。
泣き崩れ地団太を踏み、このままだと床に転がりまわりそうだ。

俺はこれ以降も様々な場合を想定した台本を用意していたが、
このまま喋っていただいた方が面白そうだ。


彼の今後を考えればもう十分殴り返したと言えるだろう。

何せ、この言動はすべて世界中にライブ配信されているのだ。





彼は言うまでもなく時の人となり、今年を代表する人物となり、

ネット上の無料素材と化した。




そーっと通すつもりであったのであろう
花粉症関連法案は日の下にさらされ、大激論を巻き起こした。

卑怯なもので、A議員など最初からいなかったかのようにそーっと法案は却下となった。




また同時に、チルタカの真摯な嘆きは「個性という言葉の拡大解釈」について
改めて皆が考え直すきっかけとなった。




年が変わるまで、A議員とチルタカについて、
そして個性という言葉の再定義について語られない日は訪れなかった。








「あの~先輩、くしゅっ、ハンコお願いします」

口元をハンカチで押さえつつ隣の席の花粉症の彼女は書類を手渡してきた。


「今年も薬効かない感じ?」

「いえ、なんか今年はすごいいい薬が出たんですよ!!
でも、人気すぎて土日じゃクリニック空いてなくて…」

「平日行ってきなよ。半日くらいなら仕事やっといてあげるから」


流石に捺印部分にしぶきがかかっているようなことはなくなった。
数年前のあの異常な事態をふと思い出す。



「ありがとうございます!じゃあ明日お願いしてもいいですか?」

「いいよ」

書類を返しつつそう言った。




ふと、スマホに通知が来ているのに気が付いた。仕事も暇なのでちらりと見る。


「またジャガイモ送らせてもらったのでご賞味ください!
今年のは力作ですよ!」



数年前までチルタカと名乗っていた青年からだ。





あのファンミーティングをもって、チルタカは動画配信を辞めた。


同時にMMMMに契約していた仲間達も
もう潮時と相次いで辞め、実質まともな契約者がいない状況となった。


まああんな政治とのからみが出来てるんじゃあな。
あの件がうまく行けば、もっと色々な意見を世の中にバラまくつもりでいたようだが

今はそんな会社があったことすら忘れられかけている。
今はUなんとかって会社の一強状態だ。


立て続けにあの時のことが思い出される。


A議員は聞いてもいないのに政界の大物や官僚の名前を出したので、
あれからしばらくは新聞のネタが尽きることはなかった。

もう少しましな人材はいたんじゃないか?と今でも思わずにはいられない。

恐らくはそんなに期待もされておらず、MMMMとチルタカやらの手腕のおかげで
想像もしないほどの成功をしたのだろう。


おかげであのお方にたどり着くのに苦労はしなかったと記憶している。

なにせ、彼は昔からオフ会に参加してくださっていた。
流石に議員であるということは伏せていたが。

しかし人一倍エラそうな態度でデカい顔も半分しか隠していないので
目をつけるまでもなく目立っていた。


初回のオフ会で覚えていたのはこの顔だったのだ。


そこから他にも何人か支援団体の人間が来ていることが分かり、
関係が芋づる式にバレていった。


彼は隠し事をするのには全く向いておらず、前に出たくて仕方がないという人間だった。


関係会社やらMMMMとの関係も本当に隠す気があるのか?
と言いたくなるほど雑であった。


しかし、A氏がその後どうなったのかだけはは全くもって分からない。



そしてチルタカは実家の北海道に帰り、家業の農業に精を出している。

新しい品種を作り出すことに生きがいを見つけたらしく、このようにしょっちゅう新作を送ってきてくれるのだ。

元々真面目な青年だ。紆余曲折したが天職を見つけたのかもしれない。

俺にはこのことが何よりの救いだった。





結局、「○○は個性」を吹聴するものはあっという間に誰もいなくなった。

まあわっと騒いでぱっと消える、マスコミとネット界隈の通常運転ではあるが。



しかし―

チルタカは大きな教訓を残した。



「気が付けば、人に迷惑かけてもそれが個性だから理解しようね。

ちょっとお互い我慢し合えばみんな過ごしやすくなるんだ。

そういって、どんどん元気な人にしわ寄せが行く社会、他人の迷惑を気にしない社会が出来かけています。



個性は、責任とセットで付いてくるものなんです。

自分を認めてもらう代わりに、自分のしたことは自分で何とかするってことと同義なんです。

個性に社会保障も、社会的配慮もついてこないんです。」



多様な人が生きていくこの世の中においては、

それは規範の中で必要最低限だが制限されてしまう。


しかし必要性があって生まれたそれを悪いものとし

批判することで自らの利得を得る道具に使う奴らがいて、そいつらに世論は簡単に騙されうる。


あの騒動でそれがはっきりと分かり、また多くの人に自覚させた。



このことだけでも、チルタカという男がいた意義はあったのかもしれないな。



俺は個性の定義がどう移り変わろうと、ずっと変人と呼ばれ続けてきた。
…一人くらい、個性と呼んでくれても良かったのだが。

その不名誉な称号は消えず、多分これからもそうだろう。



まあでも、それでいいか。

誰がどう言おうとここにいる俺は俺でしかないのだから。




「今日から花粉症は病気ではなく個性になりました。」<障害個性論を考えるためのフィクション>

―完―

長編のご愛読誠にありがとうございました。



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プロフィール

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Author:koume2019
自閉症スペクトラム(ASD)・難治性てんかん持ち女性です。
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ASD当事者のみならずASDに苦しめられている全ての方に有用な情報、ハウツーをお届けします。
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